バロックとロココの中間期に開窯したヨーロッパ初の硬質磁器窯マイセンは当然その
美術様式の影響を受けながら数々の名品を生み出しました。
フランス宮廷文化に代表される優美華麗豪奢なロココ様式がもてはやされたあとの
18世紀半ば以降には、
「わしらこのままでいいのか」
「これは一種の堕落ではないんか」などという反動の風潮が生まれます。
「新古典主義」が新たなトレンドとなるわけです。
ヨーロッパ文化の心のふるさとギリシャ・ローマ時代への回帰です。
そこでマイセンもギリシャ・ローマ神話をテーマにした作品を世に問うんですね。
名品がたくさんあります。
「エウロペの誘拐」
こちらは1900年前後のアンティーク。
フェニキア王の美しい娘エウロペに一目惚れした
ゼウスが白い美しい牡牛に化けて誘惑する場面。
そう。この牛はゼウスなんですね。
美しい牛に思わず乗ってしまったエウロペ。
ここぞとばかりにこのままゼウス牛はクレタ島まで
連れ去るのでした。
本来の姿に戻ったゼウスとエウロペは結ばれ、
めでたしめでたし。
エウロペ(EUROPE)=ヨーロッパの呼び名の起源となったお話です。
それをわかってこの作品を鑑賞すると個体の良さの判断材料にもなります。
なんともいえない牡牛の「目」がPOINT。
「しめしめ」、「よしよし」、「にんまぁ」というような目。表情。
当然、農耕用もしくは食用の牛に見えてはいけません(笑)。
そこはかとない気品を醸し出しているか、など。
元の題材などを知っているのと知らないのでは楽しみ方に大きな差が出ますね。
洋食器の創美はそういうのにすごくこだわるんですよ。
でもなんで牛なんでしょうね。
最後はまた白い牛となって天に駆け昇って牡牛座になったんだとか。
ちなみにこの原型もJ.J.ケンドラーによるものです。