マイセン 貼花装飾

アンティークマイセン スノーボール(Schneeballen)
「貼花装飾」の代表スノーボール登場。
一枚一枚の花びらを手でつくってからカップ&ソーサーや花器などに装飾する熟練職人
による超絶技法を「貼花装飾」といいます。
何点かご紹介しましたね。
当然焼成の際の収縮でひびが入ったり割れたりすることもあるでしょう。
また、アンティークでは完品のものはほとんどありません。
この程度だからいくらいくらの世界です。
その貼花装飾の代表選手がマイセンの「がまずみ」。いわゆるスノーボールです。
アンティークマイセン スノーボール_1  洋食器の創美
 ←どちらもグレードの高い1800年代後半の作品です。
 ぜひ拡大してご覧ください。
 全面に覆われた花弁はもちろんすべて手作りです。
さすがにカップの実用性云々は野暮な話ですね。
装飾に凝ったロココ様式ここにあり。
アンティークマイセン スノーボール_2  洋食器の創美
 一つ一つの花弁の大きさがが曲面に応じて変化しているのが
 お分かりでしょうか。
 さらに埋まりかたが均一です。
 かてて加えて花びら一枚一枚と花芯には手描きの絵付けが
 施されています。
 気の遠くなるような作業です。
ここでご紹介している作品はすべて洋食器の創美のアンティーク展に出品されていた
アンティークです。
現代でも制作されますが残念ながら繊細さが異なります。
花弁への彩色がなかったり花の大きさや密度の均一性がどうしても見劣りします。
名誉のために添えますが今のマイセンの職人ができないわけではないと思います。
かけていいコストの違いではないでしょうか。
マイセンの名をかけて王侯貴族の発注に応えて制作した作品と比較するのは酷。
       アンティークマイセン スノーボール_3  洋食器の創美 アンティークマイセン スノーボール_4  洋食器の創美
        久々の愛機SH702iD(ふるっ)による画像で荒れています。
貼花装飾のカップ&ソーサーはこんなふうにソーサーを裏返して飾ったりします。
もう完全なキャビネット作品(魅せる目的で飾り棚に飾られる至高の逸品)です。
こんなに凝った装飾なのにバードの絵付けはどれもなにゆえシンプルなのか?
主役は「がまずみの花」というマイセンの考えの表れだと思います。
洋食器の創美にはだいたいいつも在庫がございます。
日本でもよく見られる10月に赤い実をつけるがまずみ
花言葉は「私を無視したら死ぬ」(愛は死より強し)。
見た目より想いは深いのです。

セーブルとミントンとティファニー そしてマリー

アンティークミントン
洋食器の創美のアンティーク展でGetした愛機SH702iD(ふるっ!)画像より。
今日はちょっと長いです。
ご自宅でゆっくり日曜日おくつろぎ派用。
パテ・シュール・パテという技法があります。仏語です。
なぜなら西欧では当時のフランス王立セーブル磁器製陶所で発明されたからです。
磁土のうわずみ液(スリップ溶液)を塗り重ねて下地の色の透け具合と白の濃淡で表現
する超絶技法です。
日本では「泥彩手」といいます。
アンティークミントン パテシュールパテ_01  洋食器の創美1860年代にセーブルでルイ・ソロンが発明。
約10年後の1871年に技術開発が盛んだったミントンが彼
を引き抜きます。
で。ミントンでの愛弟子がバークス兄弟。
特に弟のアルボイン・バークスがパテシュールパテ技法
の名手となり数々の名品を残します。
←こちらもA.Birksの手によるものです。
以前にもご案内しました
が実はミントンはヨーロッパでもっとも高級なカップを製作する窯
でスーパーのワゴンのイメージは日本の商社系輸入業者が作ったもの。
盛り金(raised gold)とエッチング(acid gold)に代表される金彩装飾。
そしてこのパテシュールパテ。
いずれもフランスとの交流に積極的だったミントンの最強技法です。
1800年代後半から1900年代前半のミントンの工房ではフランス語も通じたと言われる
ほど招聘に熱心だったとのこと。
ニューヨークは五番街。
マリーの家を探します(わかった人は同世代-笑-)。
宝飾品と高級雑貨のティファニー。
陶磁器系は英国の工房に発注していました。やっぱり「金」が好き。
金彩装飾においては右に出るものがいなかったMINTONに発注します。
アンティークミントン ティファニー_01  洋食器の創美そうするとこのようなバックスタンプになります。
MINTON & TIFFANY のダブルネーム。
NEW YORK
MADE IN ENGLAND
英米連合です。
おもしろいでしょ。
キンキンきらきらしていればいいというものではありません。
新興国アメリカをあなどるなかれ。
上品さを保ちつつ金彩のゴージャスさを生かしたハイセンスな作品がオーダーされます。
ティファニーの顧客のめがねにかなう作品。
アンティークミントン ティファニー_04  洋食器の創美たとえばこのような。もちろんアンティーク。
レイズゴールドとアシッドゴールドの金彩装飾に
パテシュールパテ。
当時の最強最上技法を惜しみなく。
上品でしかもゴージャス。
このフルディナーセットって一体全体どんな?
 アンティークミントン ティファニー_03  洋食器の創美  
モチーフはいじわるいたずらプットーなので
少し残酷場面も。
これはちびっこ天使を煮詰めているところ。
ばんばん薪をくべて釜からは熱いよう~って
拡大したらわかります。
 
 アンティークミントン ティファニー_02  洋食器の創美
そしてご覧になれますか?
ブルー地の右下隅です。
まさしくアルボイン・バークスご本人の署名が。
ABの崩し文字がみえます。
もちろん三箇所ともサインがあります。
マイセンにもすごいパテシュールパテ(パットシュルパット~ドイツらしい)あります。
L.シュトルムという名人がいました。
またいずれ。
そしてパテシュールパテのすごいところは下絵付(アンダーグレイズ)という点もお忘れなく。
本焼成しない上絵付けだと「エナメル彩」になります。
さ、今日はこれくらいにして
早く五番街のマリーの暮らしぶりを見にいきましょう。

シルバーオーバーレイ

アンティークが続いていますが、
今日はシルバーオーバーレイ技法のお話です。
これ。ジノリのアンティークです。アンティークジノリ シルバーオーバーレイ コーヒーカップ&ソーサー_03  洋食器の創美
こういうのをシルバーオーバーレイっていいますが「銀巻き」というとちょっと「通」っぽい。
1840年ごろに電気メッキ技法が開発されてチャレンジャーが磁器にも銀メッキしたんですね。
昔聞いたことがある裏管理人の微妙な記憶によれば、
①まず導電性の高い素材で絵柄を転写したり手描きしたりします。
②絵柄に電線をつないで電解液に浸けて銀メッキします。
なんですが。
わざわざこのアンティークを採り上げたのはその話を聞いたときに印象に残っていたことがあったのです。
それは。
「絵柄自体が電極になるので必ず絵柄が全部つながっていないといけない」
それを思い出してそういう目で見てみると。
アンティークジノリ シルバーオーバーレイ コーヒーカップ&ソーサー_04  洋食器の創美
ほら。カップの総柄パターンと脚の部分が強引につながっています。
向こう側もそうなっていました。デザイン上の必然性はありませんよね。
ソーサーもカップもぜんぶ途切れた箇所はないのでした。
アンティークジノリ シルバーオーバーレイ コーヒーカップ&ソーサー_01  洋食器の創美
ちょっとしたことですが知っていると面白い発見があるものです。

スージークーパー

Susie Cooper (1902年-1995年)
スージークーパー。
なんだか語感がいいです。日本にはとくにファンの多い英国の陶磁器デザイナーです。
亡くなった1995年に出版された「スージークーパーのある暮らし」(このブログのテーマは「洋食器のある生活」偶然です)が日本での大ブレイクのきっかけだったことはよく知られています。
そのままの勢いで人気も日本発。
それで英国本国でも見直されたといっても過言ではありません。
1930年、弱冠28歳で独立。
アールーヌーボーからアールデコへ移行していたころですね。
スージークーパーについては詳しいWEBサイトがたくさんありますからあとは他に譲ります。
藤沢店に入荷していた1950年頃の作品のご紹介です。
スージークーパー ブラックフルーツ コーヒーカップ&ソーサー  洋食器の創美
通称「ブラックフルーツ」。スージークーパー ブラックフルーツ コーヒーカップ&ソーサー_02  洋食器の創美
いろいろなタイプがあってこれはグレープとチェリー。スージークーパー ブラックフルーツ コーヒーカップ&ソーサー_03  洋食器の創美
スージークーパー ブラックフルーツ コーヒーカップ&ソーサー_04  洋食器の創美
ウェッジウッドファンで勘のいい方はなぜ裏管理人がこのアンティークを採り上げたかおわかりでしょう?
そうです。「グレンミスト」(Glen Mist)。
ウェッジウッド グレンミスト ティーカップ&ソーサー(リー)  洋食器の創美
スージークーパーが1960年にデザインしたパターンをウェッジウッドが復刻したんですね。
ブラックフルーツとの共通点が感じられて面白いでしょう。ウェッジウッド グレンミスト  洋食器の創美
それでご紹介してみました。
アンティークのGlen Mistをみつけて一緒に使ったら楽しそうです。

ロイヤルコペンハーゲン アンティーク

なじみやすい?すてきなアンティークを
「ヨーロッパ名陶名品展」藤沢店会場で撮ってきました。
例によってケータイなので画像の質は大目にみてください。
ロイヤルコペンハーゲンのブルーフルーテッドフルレース初期のモカカップ&ソーサーです。アンティーク。
アンティークロイヤルコペンハーゲン ブルーフルーテッドフルレース モカカップ&ソーサー_01
脚がついているのわかります?こんなです。アンティークロイヤルコペンハーゲン ブルーフルーテッドフルレース モカカップ&ソーサー_02
アーノルドクローがデザインしたときのデッサン画がよく紹介されていますがオリジナルデザインはこんなふうになっています。
定番として製品化するのはコストがかかりすぎて取っちゃったんでしょうね。
これはコーヒーですが現行品にはご承知のように脚ありません。
ロイヤルコペンハーゲン ブルーフルーテッドフルレース コーヒーカップ&ソーサー071
アンティークロイヤルコペンハーゲン ブルーフルーテッドフルレース モカカップ&ソーサー_03
1924年製でした。ROYAL COPENHAGENの上のバー(線)でわかるんですよ。
写真ではわからないと思いますが感動したのはその薄さ!!
透かしてみるとパターンが全部透けて見えます。
カップもソーサーもほんとうに繊細そのものです。
手描きも丁寧で欲しくなったくらい。
続いてやはりロイヤルコペンハーゲンのアンティーク。
超絶人気ミッドサマーナイツドリーム(マイセンではありません)。
アンティークロイヤルコペンハーゲン ミッドサマーナイツドリーム ティーカップ&ソーサー_01
こちらもアーノルドクローが19世紀末にデザインした名品です。
アールヌーボー様式のフォルムにアンダーグレイズの淡い彩色。繊細で優雅。
「マーガレットサービス」という名前だったそうです。
1930年代まで制作されていました。
そして1980年代から1990年代前半まで復活。
が。あまりに手間がかかり過ぎるためコストが合わなくてまた製造中止。
アンティークロイヤルコペンハーゲン ミッドサマーナイツドリーム ティーカップ&ソーサー_02
洋食器の創美創業の頃は現役でしたからまだそろえている途中のお客様もいらっしゃいます。
ピンクとブルーがあって特にピンクは大人気。
こちらはそのピンクのティーカップ&ソーサーです。第二世代の作品でした。
多少高くなっても再度復活して欲しいですね。